OFFiler.
// ファイルを送らずに済ませる、という選択
OFFiler は、Picolas が個人で開発・運営しているブラウザ内ファイルツール群です。 このページは OFFiler そのものの操作説明ではなく、なぜこの形で作ったのかを運営側から書いたものです。 ツールの使い方や機能の一覧は OFFiler 本体にありますので、先に触ってみたい方はそちらへどうぞ。
「このファイル、どこに送られたんだろう」から始まった
きっかけは、まったく個人的な用事でした。役所に出す書類を PDF にまとめる必要があって、 「PDF 結合 無料」で検索して、上位に出てきたサイトにファイルをドラッグしました。 数秒で結合された PDF が返ってきて、その時点では便利だと思ったんです。
引っかかったのはその後でした。自分が投げたのは住所と生年月日と口座番号が載った書類で、 それを、どこの国のどのサーバーで動いているのか分からないサービスに、規約も読まずに渡していた。 多くのサービスは「◯時間後に自動削除します」と書いていますが、 それは削除されることの保証ではなく、削除するという宣言にすぎません。 検証する手段は利用者側にありません。
そして冷静に考えると、PDF を結合するのに、そもそもファイルをどこかへ送る必要はないはずでした。 ページを順番に並べて 1 つのファイルにするだけの処理です。手元の PC の性能で十分足ります。 送っていた理由は、技術的な必然ではなく、単に「Web サービスとはそういうものだから」という慣習でした。
アップロードは、多くの場合ユーザーが望んだ機能ではありません。 提供する側の都合で選ばれた実装方式です。OFFiler はその前提を外したところから始めています。
最初に作ったのは PDF 結合だけの小さなページでした。自分用に一度きりのつもりで書いたものです。 ただ、同じ発想で作れる処理が思ったより多いことに気づいて、画像変換、圧縮、メタデータ削除……と足していくうちに、 今の規模になりました。機能を先に企画したのではなく、「これもブラウザだけでできるじゃないか」を積み重ねた結果が OFFiler です。
サーバーを持たない、という設計判断
OFFiler にはファイルを処理するサーバーがありません。配信しているのは HTML と JavaScript と WebAssembly だけで、 あなたが選んだファイルはブラウザのメモリ上で読み込まれ、そのまま同じタブの中で処理されて、保存されます。 通信が発生するのは最初にページを開く瞬間だけです。この構造から、いくつかの性質が自動的に決まります。
1. 送信していないので、漏れようがない
「厳重に管理しています」ではなく「そもそも受け取っていない」という状態です。 運営者である私自身も、誰がどんなファイルを処理したのかを知る方法がありません。 これは信頼してもらうための言葉ではなく、単に構造上そうなっているだけです。 疑わしければ、ブラウザの開発者ツールでネットワークタブを開いたまま使ってみてください。ファイルが出ていかないことが見えます。
2. ファイルサイズと回線速度に縛られない
アップロード型のサービスには「無料プランは 20MB まで」といった制限がつきものですが、 あれは処理能力の限界ではなく転送コストと保管コストの限界です。 送らない設計ならその制限は発生しません。数百 MB の動画から音声を抜くような処理も、 アップロードの待ち時間ゼロで始まります。地下鉄や機内で回線が細くても、処理速度は変わりません。
3. 無料を維持できる
ファイルを預からないということは、ストレージ費用も転送量課金も発生しないということです。 維持費が静的サイトのホスティング代しかかからないので、 有料プランへの誘導も、無理な広告も、アカウント登録も要りません。 ログイン画面が無いのは方針というより、ログインさせる理由が一つも無いからです。 保存するデータが無いので、アカウントに紐づけるものがありません。
4. 制約もある
正直に書くと、この設計には向き不向きがあります。ブラウザのメモリで処理する以上、 端末のスペックがそのまま処理速度に効きますし、極端に大きなファイルではメモリ不足になることもあります。 複数人での共同編集や、処理結果をクラウドに保管しておくといった用途にも向きません。 OFFiler が担当するのは「今この場で一度だけやりたい処理」であって、継続的なワークフローの置き換えではありません。
Local Suite の中での役割
Picolas では「データを端末から出さない」という一つの方針で、用途の違う小さなアプリを個別に公開しています。 その中で OFFiler が担当しているのはファイルを加工する工程です。 隣接する役割は別のアプリが持っていて、たとえば加工したファイルを他の端末へ渡す工程は LocalTransfer が受け持ちます。 OFFiler で個人情報を消してから LocalTransfer で相手に直接送る、という組み合わせにすると、 ファイルは一度もサーバーに触れずに相手の端末まで届きます。
機能を 1 つの巨大なアプリに統合していないのは意図的です。 全部入りにすると、PDF を 1 回結合したいだけの人にも全部の読み込みを強いることになります。 それぞれ独立したサイトとして分けておけば、必要な道具だけを、必要な時に開けます。
よく使われているページ
OFFiler には多数のツールページがありますが、実際にアクセスが集中しているのは限られています。 ここでは、ブラウザ内処理であることが特に効いているものを抜粋して、 なぜそのページを作ったのかと合わせて紹介します。
氏名を入力して印影を生成し、書類に重ねられるツール。印影は署名と同じ重みを持つ画像なので、他社のサーバーに置きたくない類のデータの筆頭です。詳しくは次の節で。
→ 開くOFFiler の出発点になった機能。申請書類や見積書のように、送る前に必ず中身を確認するファイルほど、外部に渡さず手元で片付く価値が大きい処理です。
→ 開くiPhone で撮った写真が提出先で開けない、という相談が一番多かったので用意しました。写真は撮影場所や端末情報を含むため、変換のために丸ごと預けるのは割に合いません。
→ 開くSNS やフリマに写真を出す前の下処理。位置情報を消したいのにアップロードを求められるのは本末転倒なので、ここは絶対にブラウザ内で完結させたかった機能です。
→ 開くスキャンした契約書や請求書をテキスト化する処理。扱う対象が機密文書に偏るため、外部送信のない実装であることの意味が大きいページです。
→ 開く会議や講義の録画から音声だけ取り出す用途。動画は容量が大きく、アップロード型では待ち時間と容量制限の両方に当たります。送らない設計が最も体感差になる処理です。
→ 開く契約書の版違いや設定ファイルの比較に。社内の文面をオンラインの diff ツールに貼るのをためらった経験がある人向けに置いています。
→ 開く電子印鑑を、あえて自分の端末の中で作る理由
紹介したページの中で、私が最も「送らない設計でよかった」と思っているのが 電子印鑑ツールです。 理由は、印影というデータの性質にあります。
日本の書類仕事では、押印が実質的な承認の意思表示として扱われる場面がまだ多く残っています。 稟議書、注文書、請求書、業務委託契約書。テレワークが広がっても、 「印鑑を押すためだけに出社する」という話が消えなかったのは、この慣習が根強いからです。 その代替として PDF に印影画像を貼る方法が普及しましたが、ここで見落とされがちな点があります。
印影の画像は、あなたの承認を再現できるデータです。 一度どこかに保存されれば、同じ画像を別の書類に貼ることは誰にでもできます。 本物の実印を他人に預けないのと同じ感覚が、画像ファイルには働きにくいのが問題です。
よくある手順は、朱肉で押した印影をスキャンして画像化し、オンラインの背景透過サービスに通して、 Word や PDF に貼り付ける、というものです。この途中で印影画像が第三者のサーバーを経由します。 悪意を想定しなくても、ログに残る、キャッシュに残る、退会後の扱いが分からない、といった不確かさが積み上がります。 印鑑の管理には厳格な社内規定があるのに、そのデジタル版だけが無防備、という状態は珍しくありません。
OFFiler の電子印鑑ツールは、氏名や社名から印影をブラウザ内で描画します。 スキャンも要らず、生成された画像はあなたの端末から出ません。 作った印影をそのまま PDF に配置するところまでの流れは PDF に印鑑を押す手順にまとめてあります。 また、印影の位置調整や日付印などをまとめて扱いたい場合は スタンプ機能のページが入り口になります。
なお、これは法的な効力を保証するものではありません。 電子署名法上のいわゆる電子署名(本人性と非改ざん性を技術的に担保するもの)とは別物で、 あくまで紙の運用をそのまま画面上で再現するための道具です。 社内回覧や取引先の様式に合わせる用途を想定しています。 厳密な法的効力が必要な場面では、認証局を伴う電子署名サービスを検討してください。
カテゴリから探す
個別のツールではなく用途から辿りたい場合は、以下の入り口が使えます。 「何ができるのか一通り見たい」なら、まずトップページを開くのが早いはずです。
よくある質問
本当にファイルは送信されていないのですか?
はい。処理はすべてブラウザ内で完結します。確認したい場合は、ブラウザの開発者ツールでネットワークタブを開いた状態でファイルを処理してみてください。ページ本体の読み込み以降、ファイルの送信リクエストが発生しないことが確認できます。
無料なのはなぜですか。何かで収益化していますか?
ファイルを預からない構造のため、サーバー費用がほとんどかかりません。維持コストが小さいので無料で公開しています。アカウント登録も不要で、利用状況を個人単位で追跡してもいません。
オフラインでも使えますか?
一度ページを開いた後は、多くの機能がオフラインでも動作します。処理そのものに通信を使っていないためです。ただし初回の読み込みには接続が必要です。
スマートフォンでも使えますか?
使えます。ただし処理は端末側の性能に依存するため、大きな動画ファイルなどはパソコンのほうが快適です。
作った電子印鑑に法的効力はありますか?
電子署名法上の電子署名とは異なり、本人性を技術的に証明するものではありません。紙の押印運用を画面上で再現するための道具として設計しています。厳密な効力が必要な場合は認証局を伴うサービスをご利用ください。
英語でも使えますか?
はい。英語版を用意しています。サイト内の言語切り替えからも移動できます。
これから
OFFiler は個人で運営しているため、更新のペースは大きくありません。 ただ方針ははっきりしていて、機能数を増やすことより、既存のページを一つずつ実用に耐える精度へ寄せることを優先しています。 「動くけれど細かい調整ができない」段階のツールがまだいくつか残っているので、そこから手を入れています。
使ってみて不便だった点や、こういう処理もブラウザだけでできるのでは、という指摘があれば Picolas のお問い合わせから送ってください。実際、機能追加の多くは要望から来ています。